[記事公開日]2026/01/23
修理屋が行うネットワークトラブル ガチ切り分け
「インターネットに繋がらない」は1つの故障ではなく、複数の段階のどこかで止まっている状態です。
この記事は、手当たり次第に設定を触るのではなく、順番に“到達点”を確認して原因範囲を確定できるように作っています。
どの段階で止まっているかが分かれば、対応は自然に決まります。
まず「簡易チェックリスト」で該当STEPを当て、そのSTEPの本文に戻って深掘りしてください。
途中で迷ったら「整理(原因別の見分け方)」へ戻ると、判断が復帰しやすくなります。
この症状はどれ?(入口)
・Wi-Fi/有線のマークはあるのにブラウザが開かない
・IPは取れていそうだが、サイト名だけ開けない
・社内VPNやセキュリティ導入後からおかしい
・Update後に突然ダメになった(セーフモードでも?)
もくじ
- 1 インターネットは「5つの段階」で成り立っている
- 2 切り分けチェックリスト(簡易版)
- 3 切り分けSTEP1|物理接続を確認する
- 4 切り分けSTEP2|IPアドレスの取得状況を確認する
- 5 切り分けSTEP3|pingで通信の到達点を調べる
- 6 切り分けSTEP4|DNSの役割とトラブルの仕組み
- 7 切り分けSTEP5|ブラウザ・アプリ層の問題を疑う
- 8 切り分けSTEP6|Windows内部のネットワーク異常
- 9 切り分けSTEP7|セキュリティソフト・VPNの影響
- 10 切り分けSTEP8|セーフモードで原因範囲を確定させる
- 11 切り分けSTEP9|ハードウェア故障の可能性を確認する
- 12 ここまでの切り分け結果を整理する
- 13 まとめ|「繋がらない」は必ず理由があります
インターネットは「5つの段階」で成り立っている
まず全体像です。インターネットは次の順番で成立します。下から上へ確認すると最短で絞れます。
- ① 物理接続:LANケーブル/Wi-Fi電波が成立
- ② IPアドレス取得:ネットワーク上の「住所」を受け取る
- ③ ルーター〜外部到達:インターネットへ出られる
- ④ DNS:サイト名をIPに変換できる
- ⑤ ブラウザ/アプリ層:表示・証明書・拡張機能など
切り分けチェックリスト(簡易版)
まずはこのチェックだけで「どこが怪しいか」を当てます。×が付いたSTEPが主戦場です。
STEP1|物理(ケーブル/電波)
- 有線:LANケーブルを抜き差し/別ケーブルでも試した
- 有線:ポートのリンクランプが点灯/点滅している
- Wi-Fi:正しいSSIDに接続している(意図しないSSIDではない)
- Wi-Fi:ルーターに近づくと改善/悪化の変化がある
- 他端末(スマホ等)は同じ回線で使える
STEP2|IP取得(住所があるか)
- ipconfig で IPv4 が表示される
- 169.254.xxx.xxx ではない
- 192.168.x.x / 10.x.x.x 等のプライベートIPが取れている
STEP3|到達点(ping)
- ping ルーター(デフォルトゲートウェイ)が通る
- ping 8.8.8.8 が通る
- ping google.com が通る
STEP4|DNS(名前解決)
- nslookup google.com でIPが返る
- 8.8.8.8 は通るのにサイト名がダメ(DNS疑い)
STEP5〜9|アプリ/OS/セーフモード/ハード
- 別ブラウザ/シークレットで差が出る(ブラウザ層)
- Update直後に発生(OS内部)
- セキュリティ/VPN停止ではなく削除で差が出る(介入)
- セーフモード(ネットワーク有効)で差が出る(原因範囲確定)
- USB-LANで差が出る(内蔵NIC/Wi-Fi故障の判定)
切り分けSTEP1|物理接続を確認する
ここが崩れていると、その先は全て成立しません。「接続できているように見える」を疑って、まず物理を固めます。
有線LANで確認すべきポイント
- 別のLANケーブルで再現するか(最優先)
- 別ポート(ルーター側/壁側/ハブ側)へ差し替える
- パソコン側LANポートのリンクランプが点灯/点滅するか
- ノートPCのドッキング/変換アダプタ経由なら直結も試す
Wi-Fiで確認すべきポイント
- SSIDの取り違え(近隣/中継器/ゲストSSID)を防ぐ
- 2.4GHz/5GHzを切り替えて再現性を確認
- ルーター近距離で改善するか(電波要因の目安)
- テザリング(スマホ)で通信できるか(回線側切り分け)
他端末も全部ダメなら「回線/ルーター側」寄り。パソコンだけダメなら「PC側」寄り。
切り分けSTEP2|IPアドレスの取得状況を確認する
物理がOKなら次は「住所(IP)が配られているか」です。ここで止まるとインターネット以前に“ネットワーク参加”ができていません。
確認コマンド
ipconfig
正常/異常の見分け
- 正常の例: 192.168.x.x / 10.x.x.x / 172.16〜31.x.x
- 異常の例: 169.254.xxx.xxx(自動割り当ての仮IP)
- IPv4が出ない: アダプタ無効/ドライバ/取得失敗の可能性
ルーター(DHCP)からIPを受け取れず、Windowsが仮の住所を自分で付けています。
この状態はほぼ確実に通信不可なので、DNSやブラウザを触る前にここを直します。
切り分けSTEP3|pingで通信の到達点を調べる
IPが取れているなら、次は「どこまで届くか」です。pingは壊す操作ではなく診断なので、順番に淡々と実行します。
推奨の実行順
ping 127.0.0.1 ping (デフォルトゲートウェイ) ping 8.8.8.8 ping google.com
結果の読み方(要点)
- ゲートウェイまでNG: 物理/無線品質/ドライバ/ルーターとの通信に問題
- 8.8.8.8 までNG: ルーター〜回線側、またはルーティング/遮断の可能性
- 8.8.8.8 OK・google.com NG: DNSが濃厚(次STEPへ)
切り分けSTEP4|DNSの役割とトラブルの仕組み
DNSは「サイト名→IP」を変換する係です。ここが止まるとIPでは行けるのに名前では行けないが起きます。
確認コマンド
nslookup google.com
典型パターン
- nslookup がタイムアウト: DNSサーバーへ届いていない/応答が返らない
- 一部だけ表示不可: DNSキャッシュ/セキュリティ介入/プロキシ/フィルタの可能性
原因がDNSに収束したら、以降は「DNS設定/介入要素」の切り分けに集中します。
切り分けSTEP5|ブラウザ・アプリ層の問題を疑う
ここまでの結果でネットワークが概ね正常なのに表示だけ失敗する場合、ブラウザ側(拡張機能・プロキシ・証明書)の疑いが強くなります。
最短で判定する3点
- 別ブラウザ(Edge/Chrome/Firefox等)で同じサイトを開く
- シークレット(プライベート)モードで開く
- プロキシ設定が有効になっていないか確認する
特定ブラウザだけNGならブラウザ設定/拡張機能の問題。
全ブラウザNGなら次のSTEP(OS/介入)へ進みます。
切り分けSTEP6|Windows内部のネットワーク異常
Update後に突然おかしくなった、ping/DNS結果が不安定、原因が見えない場合はWindows内部(ネットワークスタック)の不整合を疑います。
リセットが効く理由(要点)
- 通信の仲介部品(Winsock等)やルールが崩れていると、表面上は接続済みでも通信が壊れます
- リセットは「個別修正」ではなく「通信部品の再構築」なので、原因が特定できないケースに強い
ネットワークリセットはWi-Fi設定やVPN設定が消えることがあります。
会社/業務PCでは手順や影響範囲を確認してから実施してください。
切り分けSTEP7|セキュリティソフト・VPNの影響
ここは現場で多い落とし穴です。セキュリティ/VPNは通信経路に割り込むため、「停止」だけでは残骸が効き続けることがあります。
典型症状
- pingは通るのにブラウザでエラー(証明書/接続失敗)
- 会社VPN利用後から自宅でおかしい
- DNSだけ不安定、特定サイトだけ不可
正しい切り分け
- 可能なら一時停止ではなくアンインストール+再起動で差を見る
- 仮想アダプタやフィルタ(VPN残骸)が残っていないか確認する
切り分けSTEP8|セーフモードで原因範囲を確定させる
セーフモード(ネットワーク有効)は、余計な常駐/介入要素を減らして起動します。ここで結果が分かれると、原因範囲がほぼ確定します。
結論の出し方
切り分けSTEP9|ハードウェア故障の可能性を確認する
最終確認です。ネットワーク機器(内蔵LAN/Wi-Fi)は壊れます。壊れ方が「不安定」になりやすいのが特徴です。
USB-LANアダプタで最短判定
- USB-LANで正常: 内蔵LAN/Wi-Fi側の不良が濃厚
- USB-LANでも不調: OS/設定/回線側の再確認(またはより深い故障)
無理な分解はリスクがあるため、業務用途や再発が困る場合は修理相談が安全です。
ここまでの切り分け結果を整理する
「どこまでOKで、どこからNGか」を整理すると、次の対応が迷いません。最後に原因カテゴリ別の見分け方を表でまとめます。
| カテゴリ | 典型サイン | 決め手になる確認 | 主な対応の方向 |
|---|---|---|---|
| 物理 | リンクランプ消灯/電波が弱い/全端末NG | 別ケーブル/別ポート/近距離で変化 | ケーブル交換・設置見直し・ルーター/回線確認 |
| IP取得 | 169.254/IPv4が出ない | ipconfigで即判定 | DHCP/アダプタ/ドライバ/介入要素を確認 |
| 外部到達 | ゲートウェイOKだが8.8.8.8 NG | ping到達点で判定 | ルーター〜回線側/遮断設定/経路の問題 |
| DNS | 8.8.8.8 OK・サイト名NG | nslookupで判定 | DNS設定/キャッシュ/セキュリティ介入を切り分け |
| ブラウザ層 | 特定ブラウザだけNG/シークレットでOK | 別ブラウザ比較 | 拡張機能/プロキシ/証明書/設定初期化 |
| Windows内部 | Update後から不調/原因不明 | リセットで改善するか | ネットワークスタック再構築/ドライバ整合 |
| 介入(AV/VPN) | 停止で直らない/導入後から不調 | 削除+再起動で差を見る | ソフト入替/設定見直し/残骸除去 |
| ハード | USB-LANで改善/内蔵のみ不安定 | USB-LAN/別アダプタで判定 | 部品交換/修理/外付け常用 |
まとめ|「繋がらない」は必ず理由があります
インターネットの不具合は、仕組みのどこで止まっているかが分かれば、原因も対策も自然に決まります。
最短ルートは「物理 → IP → ping → DNS → ブラウザ → OS → 介入 → セーフモード → ハード」の順番です。
