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[記事公開日]2026/08/17
[最終更新日]2026/08/19

TPMを初期化する前に知っておきたいBitLockerの注意点

TPM(Trusted Platform Module)のエラーやWindows HelloのPINトラブルが起きたとき、対処法として「TPMを初期化する」「TPMをクリアする」と案内されることがあります。

しかし、BitLockerやデバイス暗号化を使用しているPCでは、回復キーを確認しないままTPMをクリアするのは危険です。TPMには暗号化やサインインに使われるキーが保存されており、クリアするとTPM内のキーが削除されます。

Microsoftも、TPMのクリアはデータ損失につながる可能性があるため、事前にバックアップと回復手段を確認するよう案内しています。

最初に結論:TPMをクリアする前に必ず確認すること

TPMをクリアする必要がある場合は、少なくとも次を確認してから作業してください。

  1. PC内の重要データをバックアップする
  2. BitLockerまたはデバイス暗号化が有効か確認する
  3. BitLocker回復キーを実際に確認できる状態にする
  4. 回復キーが対象PC・対象ドライブのものか確認する
  5. Windows HelloのPINや生体認証が再設定になる可能性を理解する
  6. 会社・学校のPCなら自分の判断でTPMをクリアしない
  7. 本当にTPMクリアが必要な症状なのか確認する

「TPMエラーが出たから、とりあえずクリアする」という順番にはしないでください。

「TPMの初期化」と「TPMのクリア」は同じ意味?

Windowsの説明では、TPMを工場出荷時に近い未所有状態へ戻す操作を「TPMをクリアする(Clear TPM)」と表現します。

TPMをクリアすると、TPMに保存されていた所有者情報やキーが削除されます。その後、WindowsはTPMを自動的に再初期化し、再び利用できる状態へ準備します。

そのため、一般に「TPMを初期化する」と呼ばれている操作の中には、実際にはTPMをクリアしてWindowsに再初期化させる操作を指している場合があります。

TPMをクリアすると何が消える?

Microsoftによると、TPMをクリアするとTPMに関連付けられて作成されたキーが失われます。

影響を受ける可能性がある代表例は次のとおりです。

  • BitLockerで使用されるTPM保護情報
  • Windows HelloのPINに関連するキー
  • Windows Helloの生体認証に関連する情報
  • 仮想スマートカードなどTPMで保護される認証情報
  • 企業向けの証明書・認証機能でTPMに保存されたキー

Microsoftは、TPMクリア後はWindows HelloのPINや生体認証がそのまま利用できなくなるため、PINの再設定が必要になる場合があると案内しています。

TPMをクリアするとSSDのデータが全部消える?

TPMをクリアする操作そのものがSSDをフォーマットするわけではありません。

ただし、問題は「SSD内のデータを保護している暗号化キーへアクセスできるか」です。

BitLockerでOSドライブがTPMによって保護されている場合、TPM内の情報が変わることで自動解除できなくなり、次回起動時にBitLocker回復キーを要求される可能性があります。

正しい48桁の回復キーを持っていれば回復できる場合がありますが、回復キーが見つからない状態でTPMをクリアすると、必要なデータへアクセスできなくなるリスクがあります。

最重要:BitLocker回復キーを事前に確認する

TPMを操作する前に、BitLockerの48桁の回復キーを確認してください。

個人利用のPCでは、Microsoftアカウントに保存されている場合があります。

MicrosoftアカウントのBitLocker回復キーを確認する

確認するときは、「Microsoftアカウントに何かキーが表示されている」というだけでは不十分です。

対象PCのBitLocker回復画面に表示される回復キーIDと、保存されている回復キーのIDが一致することを確認してください。

回復キーIDと48桁の回復キーの違いが分からない場合は、「BitLocker回復キーのIDと48桁のキーは何が違う?確認方法を解説」を参考にしてください。

Windowsが起動しているなら回復キーを追加でバックアップする

Windowsへ正常にサインインできている段階なら、TPMをクリアする前にBitLocker回復キーのバックアップを追加しておくと安全です。

Windows ProなどでBitLocker管理画面を利用できる場合は、次の手順で確認できます。

  1. スタートメニューで「BitLocker」と検索する
  2. 「BitLockerの管理」を開く
  3. 対象ドライブの「回復キーのバックアップ」を選ぶ
  4. Microsoftアカウント、USBメモリ、ファイル、印刷など利用できる方法で保存する

Microsoftは、回復キーを複数の方法でバックアップできると案内しています。

USBメモリや印刷物に保存する場合は、PC本体と同じ場所に保管しないことも重要です。PCと回復キーを一緒に盗まれると、BitLockerによる保護を回避される可能性があります。

BitLockerが有効か分からない場合

「自分でBitLockerを設定した覚えがない」というPCでも、デバイス暗号化が有効になっていることがあります。

TPMをクリアする前に、Windows上で暗号化状態を確認してください。

Windows Proなどでは「BitLockerの管理」、対応機種では「設定」内のデバイス暗号化から確認できます。

コマンドで状態だけを確認する場合は、管理者としてコマンドプロンプトを開き、次を実行できます。

manage-bde -status

このコマンドはBitLockerの暗号化状態や保護状態を確認するためのものです。

状態が分からないままTPMをクリアしないでください。

Windows HelloのPINも影響を受ける

TPMクリアの影響はBitLockerだけではありません。

Microsoftは、Windows HelloのPINや生体認証を設定している場合、TPMクリア後にそれらが利用できなくなり、PINを再設定する必要があると説明しています。

そのため、作業前に次も確認してください。

  • Microsoftアカウントのパスワードを把握しているか
  • 職場・学校アカウントのサインイン情報を確認できるか
  • インターネットへ接続できる環境があるか
  • 会社PCの場合、再登録や管理者作業が必要にならないか

PINしか覚えておらず、Microsoftアカウントのパスワードを確認できない状態では、TPMをクリアする前にアカウント情報を整理したほうが安全です。

会社・学校のPCでは勝手にTPMをクリアしない

Microsoftは、会社や学校など自分が所有していないデバイスでは、IT管理者から指示されない限りTPMをクリアしないよう明記しています。

組織のPCでは、TPMが次のような仕組みに利用されている可能性があります。

  • BitLocker
  • Windows Hello for Business
  • 証明書ベースの認証
  • 仮想スマートカード
  • デバイス認証・コンプライアンス管理

TPMクリア後に再登録や管理者作業が必要になる場合があるため、会社・学校PCはIT担当者へ相談してください。

TPMをクリアする前に、本当に必要か確認する

TPM関連のエラーが出ても、TPMクリアだけが対処方法とは限りません。

まず次を確認してください。

  • PCを一度完全に再起動して改善するか
  • Windows Updateが保留中になっていないか
  • TPMがWindowsから認識されているか
  • BIOS / UEFIでTPMが無効になっていないか
  • BIOS更新直後から症状が出ていないか
  • Secure Boot設定を変更していないか

TPMの状態は「Windowsキー + R」から tpm.msc を実行して確認できます。

「TPMは使用する準備ができています」と表示されている場合、少なくともWindowsからTPM自体は認識されています。

BitLocker回復画面が出ている最中にTPMをクリアしてよい?

おすすめしません。

すでにBitLocker回復画面が表示されている場合は、TPMをさらに変更する前に、まず正しい48桁の回復キーを確認してください。

回復画面は、TPMやSecure Boot、BIOS / UEFIなど起動環境の状態が以前と変わったために表示されている可能性があります。

原因が分からない状態でTPMをクリアすると、問題の切り分けが難しくなるだけでなく、回復に必要な情報まで失う可能性があります。

まず「BitLocker回復キーを求められたら最初に確認すること|初期化する前の対処」に沿って、回復キーと直前の変更を確認してください。

BIOS / UEFIから直接TPMをクリアしない

Microsoftは、TPMをクリアする場合はWindowsの機能を使用し、UEFIから直接TPMをクリアしないよう案内しています。

Windowsから実行する場合は、Windows セキュリティの次の場所から操作できます。

  1. 「Windows セキュリティ」を開く
  2. 「デバイス セキュリティ」を開く
  3. 「セキュリティ プロセッサの詳細」を開く
  4. 「セキュリティ プロセッサのトラブルシューティング」を開く
  5. 「TPMのクリア」を選ぶ
  6. 再起動後の確認画面に従う

ただし、これは「TPMクリアが必要だと判断できた場合の実行方法」です。原因が分からない段階で試す手順ではありません。

TPMクリア前の安全チェックリスト

確認項目 確認できたか
重要なデータを別媒体・クラウドへバックアップした 必須
BitLocker / デバイス暗号化の状態を確認した 必須
48桁のBitLocker回復キーを確認した BitLocker有効時は必須
回復キーIDが対象PCと一致している 推奨
Microsoftアカウントのパスワードを確認した 推奨
会社・学校PCではIT管理者の許可を得た 組織管理PCでは必須
TPMクリアが必要な理由を確認した 必須

TPMクリア後にBitLocker回復キーを求められた場合

TPMをクリアしたあとにBitLocker回復画面が出た場合は、事前に保存した48桁の回復キーを使ってドライブのロックを解除します。

回復キーが複数ある場合は、回復画面に表示される回復キーIDと照合してください。

回復キーがMicrosoftアカウントに見つからない場合は、「BitLocker回復キーがMicrosoftアカウントに見つからないときの確認方法」を参考に、別アカウント、職場・学校アカウント、印刷物、USBメモリなども確認してください。

TPMクリア後にPINでサインインできない場合

TPMクリア後にWindows HelloのPINが使用できなくなることは、Microsoftも注意点として案内しています。

画面に「PINを設定する」「PINを使用できません」などと表示された場合は、Microsoftアカウントや職場・学校アカウントで本人確認を行い、PINを再設定します。

ここでMicrosoftアカウントのパスワードまで分からない場合は、TPMとは別にアカウント復旧が必要になります。

BitLockerを一時停止すればTPMクリアしても安全?

BitLockerの一時停止は、BIOS / UEFIやファームウェア変更などで一時的に起動時検証を緩和するために使われる機能です。

ただし、一時停止しただけで「TPMクリアによるすべての影響がなくなる」わけではありません。Windows Helloや証明書など、BitLocker以外にもTPMで保護される情報があります。

BitLockerを一時停止する必要がある作業については「BitLockerを一時停止するべき作業と再開を忘れた場合の確認方法」も確認してください。

よくある質問

TPMをクリアすればBitLockerも解除されますか?

いいえ。TPMをクリアすることとBitLockerの暗号化を解除・復号することは別の操作です。むしろTPMの状態が変わったことで、BitLocker回復キーを要求される可能性があります。

TPMをクリアするとWindowsは再インストールされますか?

通常、TPMクリアそのものがWindowsを再インストールする操作ではありません。Windowsは再起動後にTPMを再初期化します。ただし、TPMで保護されていたキーへアクセスできなくなることで、サインインや暗号化データへのアクセスに影響が出る可能性があります。

BitLocker回復キーがMicrosoftアカウントにあれば大丈夫ですか?

対象PC・対象ドライブの回復キーであることをIDで確認してください。別PCや過去の回復キーが複数登録されている場合があります。

TPMエラーが出たら最初にクリアしてよいですか?

おすすめしません。再起動、Windows Update、TPM認識状態、BIOS / UEFI設定など、より安全な確認を先に行い、TPMクリアが本当に必要か判断してください。

会社のPCでTPMエラーが出ています

自分でクリアせず、IT管理者へ連絡してください。Microsoftも、自分が所有していない仕事・学校用PCでは管理者の指示なしにTPMをクリアしないよう案内しています。

Microsoft公式情報

まとめ

  • TPMクリアはTPM内のキーを削除する操作で、データ損失につながる可能性がある
  • BitLockerが有効なPCでは、48桁の回復キーを確認してからTPMを操作する
  • 回復キーは対象PC・対象ドライブのキーIDと一致するか確認する
  • TPMクリア後はWindows HelloのPIN・生体認証を再設定する場合がある
  • 会社・学校PCではIT管理者の指示なしにTPMをクリアしない
  • MicrosoftはUEFIから直接ではなく、Windowsの機能を使ってTPMをクリアするよう案内している
  • TPMエラーが出ても、原因確認より先にクリアしない

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